2006.12.28
御沓 一敏
他人を魅了するもの

本が好きな自分ではあるが、こんなに素晴らしい本の出版に多少なりともかかわることができ、また、出会えるとは思っていなかった。

思えば、佐藤さんとの出会いは10数年前になるだろうか、佐藤さんのタッピツ?の手書きの文章をパソコンで入力するのが私の役目だった。
最初は、簡単に文字が読めないから、この人が日常、何を考え、どのように行動しているかを理解しようと一所懸命コミュニケーションを取った。
佐藤さん流に言えば、ないからこそ努力をし、積み重ねてきた結果できたと思っていた。しかし、今回は、それが役に立たなかった。

それは、佐藤さん自身が途惑うほどの環境に置かれていたので、状況が読めなかったということもある。

もう一つは、私自身にないものがあったからである。
特に、「ギリシャからの手紙」P104の「陰影礼賛」の解読は困難を極めた。谷崎潤一郎らしいのだが、後が読み取れない。
恥ずかしいことに、私はこの本を知らなかった。
たとえ読んでいたとしても、「障子から入る光には日本的な美学がある」の件を思い出せたであろうかと思うと自信がない。また、その時点で読み始めたのでは、とても間に合わない。インターネットに助けられた。これほど、この世界がありがいと思ったことはない。

私は常々、佐藤さんは石の彫刻が一番向いていると言ってきた。それは大胆さが生かせるからであり、それ以上に全体を捉えるグランドデザインを描かせたらピカイチだと思っているからである。
ところが、この本を読んで感じたことは、記憶力や気付きのよさ、繊細さ、おう盛なサービス精神も持ち合わせているということである。
こうした点が、ギリシャの人々をそして、仲間たちを魅了してやまないのであろう。