2009.03.16
膝の痛みを通して(3)
御沓一敏

病院でPTよりリ治療体操等のハビリを受けたときは効果があるのだが、持続性がない。外に出て、20メートルほど歩くと痛くなる。ちょっと、回復の見通しが立たなくなり落ち込みそうになった。

そんな時、同じ病院に週3回、外部からみえるPTの中に入谷式(発案した人の名前)足底板(そくていばん=靴の中敷)を造る人がいるということを知った。とにかく早く治したいという思いがあるからすぐに申し込んだが、正直、本当に中敷で治るものなのかと半信半疑であった。

説明には「解剖学・運動学などの基礎医学に加え物理学の要素を踏まえて決定する」とあったが、実際にお会いして、話を聴きながら、造っていただいた方が分りやすい。

   20カ所のポイントに対して、0.17mmの厚さのゴムやテーピングを足底に添付したり巻いたりして歩行を繰り返すことで、「楽になる」高さを判断し、両足用の足底板の形状を決定する。完成、持ち帰りまでに2時間余り、通院の必要もなく、締めて15,000円は保険がきかないとはいえ、良心的な費用だと思うが、後継者と普及には苦労をしているようである。

   後は、1ヵ月後、3ヶ月後、6ヵ月後……と診断してもらうだけ。歩行に関する主治医ができたと思えばこんなにありがたいことはない。ちなみに、普通の治療体操等の必要性はなかったと聞いて一瞬、いままでの時間と治療費が無駄のように思えたがそうではなく、膝の痛みを含めて全てが必然であり、いままでのプロセスがあったから、このような素晴らしい方に出会わせていただけたように思う。

マニュアルもなく、勘に頼った現場主義の職人芸のため、この方法ができる人は日本全国に10名前後しかいないというのが現況。発案者の学歴、学閥、○○門下、役人の評価などの点で見ると、条件としては、かつて話題に上ったMワクチンのことを思い出す。   さらに、“筋肉は制御の働きをする役目なので、筋トレだけをやりすぎると変な方向に行きかねない等々”の理論は今までの治療の常識の中にはないらしく、安全運転を願うのか、一般の若いPTの中に、われこそはという跡継ぎが生まれる様子もない。

悪事は千里を走っても、良いことはなかなか広まらないのが世の常である。コスモ夢舞台の状況を思うと他人事ではない。縄文人の末裔(自称)としては、何とか手伝えないかという思いで、足腰が痛いという人に会うと、とにかくご紹介をしている。

お蔭様で、平坦な道路とはいえ、自宅から駅までの往復4kmを損傷以来、はじめて歩けるようになった。これが豊実で通用するかどうかは、やってみなければ分らないが、そのときはその結果と状況を受け容れるしかないと思っている。
   ともあれ、膝の痛みを通して、いろいろな場面と人の出会いを経験した数ヶ月であった。

*PT(理学療法士:Physical TherapistまたはPhysio Therapistの略称)