2010.08.19
石舞台の完成に寄せて
坂内克裕

 石舞台の完成おめでとうございます。一日だけでしたが作業に携わった私としてもうれしい限りです。

 それにしても、あんな暑い中ケガ人もなくよく無事に終わったものだとホッとしています。佐藤さんは、ギリシャのときもそうでしたが、暑い夏の作品制作の機会に恵まれすぎているようです。最後のほうはお二人とも食欲が無くなったり、言葉に思いやりが無くなったりしたようでしたが、そこは長年のお付き合いのお二人、終わればまた楽しく杯を傾ける仲に戻ってらしたようで、この点でもすばらしい人間関係だと思います。

 完成写真を仔細に眺めると、あの道幅が石板一枚で覆われているのもあって驚きました。最初の日の作業終了時に、大野さんが「明日からの敷石作業のイメージが得たいので、一枚だけでいいから大きな石を持ってきて敷いてみてもらいたい」というので、佐藤さんと石夢工房からかなり大きな石材を運んで、重心が見極めにくいため2度もワイヤーを掛けなおしたりしてやっと道に仮置きしたのですが、それでもまだ幅50センチくらい足りませんでしたので、あれよりももっと大きな石材があったんだなと驚いたわけです。

敷かれた石の表面が揃って平らだということにも驚きました。なにせ使用した石材は、土手に張ったものの写真でも分かるように厚さが均一ではありません。それは、石材業者が用材を切り取ったいわば切り落としのもので、本来は金をかけて廃棄処分するものを安く譲り受けたものであるからです。こんなデコボコの石を敷いて佐藤さんは「トラックが入る道にしたい。」と大野さんに希望を述べます。すると大野さんは静かに諭すような口ぶりで「それなら、下面のデコボコに合わせて砂を敷いて隙間が無いように何度も石を上げたりおろしたりして調整したあげくにコンクリートで固めなければならない。そうしないと、トラックが入ったら石材が簡単に割れてしまう。」と言います。こんなやり取りの末に、フォークリフトを使った作業となった訳ですが、それにしてもあれだけのデコボコ石の状態を感じさせないほど整然と仕上がっており、この苦労は並大抵のものではなかっただろうと想像できました。実際、土手に石を張ったときも、張り終えた後に、大野さんは「3番目の石材の表面が揃ってない」といってやり直しを提案。3人で石材を押したり引いたりバールを使って持ち上げたりした挙句に、状態が前より悪くなってしまってもあきらめず、何度も何度も挑戦。やっと満足できる状態に収まったときは30分以上も費やしていました。これぞ職人気質。こんな訳ですから敷石作業のときはいかほどだったか、容易に想像できたという次第で、佐藤さんが「石舞台完成」に書いているお二人の厳しい口調のやり取りも「ははぁ〜ん」と納得してしまいました。

さて、こうして完成にこぎ着けるまでには、佐藤さんも書いているように、コスモ夢舞台の会員ばかりでなく、村の若人やエンジンを直してくれた85歳のおじさんまで、多くの人の助けがあったわけです。実際に作業をした私の感想を述べれば、こんなに綺麗な芸術作品としての完成写真をみるとほんとに嬉しくなり、自分の中にも達成感満足感が湧き上がってくるのを覚えました。そしてこれこそが、「感動ある人間交流」、「一人ひとりが輝く」、「本物と向き合う」というコスモ夢舞台のモットーそのものなのだなと実感できた次第です。

完成した石舞台は、佐藤さんと大野さんの共作ということで「里山アート展」の作品の一つとして展示されるそうですが、その際展示パネルに、「その他協力者」としてお手伝いいただいた村人などの名前も入れれば、各人の達成感も深まり、誇りともなって、より一層の絆で結ばれることともなり、コスモ夢舞台の将来を輝かすこととなるでしょう。