2017.03.26
豊実の春
森 紘一 

久しぶりの豊実は快晴の青空で、吹く風は田んぼや畑の雪を通して冷たかったが、春の気配にあふれていた。

吹き溜まりの雪の下にはフキノトウが顔をのぞかせている。里山アート展の会場に残る雪もわずかで、シンボルドームや鳥獣戯画の動物たちも元気に手足を伸ばしているかのようだ。 

 3月25日(土)、恒例の味噌造りイベントに参加した。とはいえ、わたしが豊実にたどり着いた頃には未明からの作業はほぼ終わっていた。煮汁を含ませる最後の工程の練り作業を、形だけ見習って体験させていただいた。

 五泉から参加された沢田さん、市内からの矢部さん小宮さん、地元の長谷川さん、それに関東からの大塚さん、桐山さん、飯野さん(&タダシ君)、お疲れ様でした。

佐藤さんとマキ子さんのリードで、古田さん夫妻(すっかり地元に溶け込んでいる様子でお元気でした)と我々を含む総勢12名の手づくり味噌は、無事収納桶に収まりました。あとは、石夢工房の味噌蔵で静かに熟成されるばかりです。 

ところで、豊実の味噌造りも今年で10回目となるそうです。飯野さんの話では、間もなく二年生となる直志(タダシ)君のお姉さんが初回に参加されていたそうで、その彼女は4月から大学生だそうです。

「早いものだなぁ」と、思わず感嘆の声が出る。

しかし佐藤さんは、「我われも年を取るわけだ」とは言わない。「我われに残された時は少ないのだから、みんなで夢を追いかけて行こう、その方が楽しい」と続く。確かに、次世代以降のタダシ君たちの世代にまで、例えば豊実の味噌造りはつながってほしいものである。

作業終了後はいつものように和彩館で昼食となったが、そんなわけで話題も豊富な交流懇親会となった。その上、マキ子さんを中心とした賄い班の準備は周到を極めていた。フキノトウやキノコの揚げ物、珍しい小魚のフライもあれば、ニンジンのモロッコ風味付け、シソやゴマ入りの手づくりパンからシフォンケーキ、お豆腐でつくったデザートまでという豪華メニューだった。これだけそろえば、勢いビールで乾杯ということにもなった。

里山アート展会場の奥に見えるモダンなデイケアーセンターの閉鎖や和彩館前の空き家の話で、しばし盛り上がった。

「我われのグループホームとして使えたら最高だね」

「野外の里山アート展と連動して、室内のアート工房として活用できたら面白いね」

 高齢化の進む過疎の集落にそんな芸術村ができれば、間違いなく“魅力あるまちづくり”となる。町役場への働きかけを真剣に考えてみようという話にもなった。皆さんの活発な感想や意見は、そのままコスモ夢舞台のこれからの課題として喧々諤々の展開となっていった。 

 関東方面や新潟市内へ皆さんが戻った後、佐藤さんと古田さん、飯野さん親子で、西会津の温泉施設ロータスインに出かけた。久しぶりに露天風呂に浸りながら、またぞろコスモ夢舞台の行く末を語り合った。

 和彩館に戻ってからも、身体はポカポカとあたたかい。就寝までの間、マキ子さんを加えてさらに語り合いは続いた。 

きょうは、思い出に残る長くて楽しい一日となった