2009.08.23
15回十日町石彫シンポジウムに立ち寄る
里山アート展実行委員長・彫刻家 佐藤賢太郎

8月17日十日町市石彫シンポジウム会場に久しぶりに参りました。藤巻秀正先生が待っていてくださいました。実行委員長小林さん、庭野さん、カメラマンと関係各位のかたともお会いでき嬉しいひと時でした。その場で今年の里山アート展に見学に行こうといっていただきました。そして今振り返り、十日町石彫シンポジウムに思うことを述べてみます。

6年前、私は第9回十日町石彫シンポジウムの参加作家として、十日町市街地を案内していただきました。まず感銘したことは、この小さな市になぜホットな彫刻が多く設置され、シンポジウムが継続されるのだろうかということだった。

この石彫シンポジウムに参加したことがきっかけで、私は過疎の故郷に野外アート展を立ち上げ十日町の石彫シンポジウムがなぜ継続できているか、私なりに見えてきたものがある。

継続できる原動力の第一は、市民の石彫シンポに対する理解と受け入れにあると思えた。しかも中越大地震の被害を受けての継続には驚く。こうしたシンポジウムには経費がかかるものであるが、それを民間企業も支え、さらに作品設置場所も私有地を提供している。
   私自身、参加作家として市民との暖かい交流が今も忘れられない。私はこの受け入れには織物の町として、古くから京都との交流で栄えた文化がその底流にあるのだろうと思えた。

また、行政の取り組みも他には見られないものがある。十日町市では立ち上げに際し、このシンポジウムに熱意をもって取り組む職員がいたと伺った。こうした職員がいればこそ行政全体も動いたのだろう。

   さらに、参加作家の選考について特質すべきことがあると思えた。一般的には有名評論家をお招きし、選考する。また有名作家の作品を設置して「アートあるまち」とするようですが、十日町では地元作家のコーデネーターが全国の個展や展覧会場を歩き、設置場所に合った作家を選ぶ独自の方法をとっている。こうしたあり方こそが地域独自の特徴あるまちづくりになるのだろうと思う。

ところで、こうした石彫シンポジウム実施による期待と効果は何だろうか。十日町市は「芸術文化のかおるまちづくり」と位置つけている。はじめから地域活性化などと言ってはいない。石彫シンポ開催によって市民、来訪者、作家の人間交流、そして作品によってものの見方を豊にする精神を芽生えさせているのだろう。

   今日、十日町市のように継続しているシンポジウムはまれになっている。その意味でも、地に付いた取り組み方に注目したい。