2008.07.22
須賀川のギャラリーマスガ
森紘一

 JR須賀川駅に近い増賀さんのギャラリーは東北道の須賀川インターから10分弱だった。いただいたポストカードの略図も分かりやすく、初めてでも迷うことなく正午前には到着した。
   瀟洒な2階建てのギャラリー正面に大きな黒御影のレリーフ『星ふる夜』が飾られ、その横に「佐藤賢太郎 彫刻展(7/19〜27)」の案内板があった。梅雨明けが発表されたという今日(19日)の外気温は30度を優に超える極暑だったが、あたりの佇まいにはさわやかな賑わいがあった。

 婦人像『リベンジ』をはじめ愛くるしい小動物など50点以上の作品が並べられた会場では、賢太郎さんが某新聞社の取材を受けていた。笑顔で迎え入れていただいた増賀さんご夫妻に伺うと、ご当地では5回目だという。福島近在の賢太郎さんのコレクターやギャラリー マスガの支援者の方々がつぎつぎにみえて旧交を温めている様子は、ファンクラブの集いのようにも見えた。なるほど、個展会場は地域や町の社交場でもあるわけだ。

 わたしと入れ違いに、郡山在住のふくろう会員の大島さんと茨城の彫刻作家佐治さんが帰られたところだと賢太郎さんからお聞きした。が、話にはもうひとつサプライズがあった。今年の「里山アート展」には地元の小学生が参加することになった、というのだ。佐治さんが阿賀町の小学校を歩き廻って話をまとめてくださったのだという。佐治さんの熱意とご努力には、ほんとうに頭がさがる。

 会場にお越しいただいたという高名な日本画家の小泉先生には、コスモ夢舞台の豊実の大自然を画材にいかがですか、と賢太郎さんも奨めたという。賢太郎さんも増賀さんも作品を前にして、モノを売らずに夢を語りつないでいる。たしかに、ギャラリーとは人間交流の回廊かもしれない。魅力的な人々との出会いは、この後も続いた。

わたしは初対面だったが、建築家の安齋さんご夫妻と賢太郎さん、増賀さんとご当地の蕎麦をご馳走になりながら歓談させていただいた。今や食だけでなく、建物や建材も人にやさしく安全で安心できる自然な素材が見直されています、という安齋さんの話には説得力があった。                                
   豊実のコスモ夢舞台は、建物はすべて手づくり、かまどで炊いたご飯で旬の山菜料理を味わう。石窯で焼いたピザや十割蕎麦もあります。賢太郎さんも、負けずに力説していた。
    教育も大きなテーマです、と話は「コスモ夢舞台塾」にも及んだ。安齋さんご夫妻を増賀さんが豊実のコスモ夢舞台にご案内いただくのは時間の問題のようだ。

 閉館近くに「子どもたちの観光力」の著者で猪苗代在住の小椋唯一さんが立ち寄られた。
国土交通省認定 教育旅行誘致の観光カリスマ、内閣府地域活性化推進室 地域活性化伝道師、いただいた名刺には珍しい肩書きが並んでいた。奥阿賀ネットワークとの連携で展開している農家民泊の体験学習がご縁で、我われも「子どもたちの観光力」ではいろいろと勉強させていただいた。

明るく闊達な口調は、いかにも性格そのものといった印象だった。それにしても、地域や民間団体と行政の間に入って、地域を元気にしようとご腐心されている行動力は素晴らしい。賢太郎さんに共通する“動いてこそ、感動にめぐりあう”を実践されている方のようだ。どうやら束の間の出会いで、豊実のコスモ夢舞台に近々お見えになる約束が賢太郎さんとの間に成立したようだ。 

わたしの方からは、町づくりや人づくりに関する古木修治さんの文章と佐藤賢太郎さんに触れたくだりをお読みいただきたいと、『「第15回 EU・ジャパンフェスト」を終えて』のコピーをお渡しした。

明日(20日)から担当する体験学習の打ち合わせのつもりが、すっかり長居してしまった。ギャラリー マスガの魅力は、何といってもご夫妻の温厚な人柄と須賀川という土地柄の幅広い人脈に支えられている点にあるようだ。                 
    また、お邪魔させていただく機会が楽しみになってきた。(終)