2009.12.

2016.06.01
新名所「アート通り」
森 紘一

  佐藤さんの「移住者とウーフ」を読みながら、そこに添えられた写真を眺めていると、ふと鮮やかな記憶がよみがえってくる。

 あれからもう、6年の歳月が流れている。

歌の国エストニアが誇るエレルヘイン少女合唱団(46名)が里山アート展会場の田んぼの特設ステージで、清らかな歌声を響かせたことがある。当日は真夏の太陽もなく、降りしきる雨の中、急きょテントを設営したところ、開演直前に雨が止むという急変があった。企画を推進されたEU・ジャパンフェスト日本委員会の古木修治さんともども佐藤さんと我われも奇跡を喜び合ったものである。

 彼女たちの歌声がこだまする雨上がりの集落は、山々も川面も、育ち始めた若い稲穂でいっぱいの田んぼも、いつもとは違う別世界のようだった。和彩館から会場へ、黒いTシャツと白いパンツの可憐な彼女たちの移動は、まるで異国の街並みの華やかさだった。

思えばあの時すでに、豊実駅前から赤い大きな船渡大橋手前の里山アート展会場までの国道459号線は、メルヘンの世界だった。

 今年からコスモ夢舞台は、「豊かな田舎暮らし」をテーマに阿賀町豊実への移住・定住者の推進を進めていく。すでに2世帯の方々が、関東の都市部から移住されている。第13回目となる「里山アート展」も、こうした背景をもとに推進事業の一環として、この秋に開催される。コスモ夢舞台の都市との交流による地域の活性化は、新しい局面に入ることになる。

 一方、一昨年(2014)9月から始まったウファーの受け入れは、佐藤さん夫妻のご尽力で、今年も初のウファーが来日されている。その方が漫画家志望のアメリカ人ウファーのモーリーさんということになる。

佐藤さんの国際交流はますます盛んで、昨年秋、ウファーとして豊実に滞在されたラシェッドさんとの現地再会紀行文『モロッコへの招待』も間もなく刊行される。

 今はFさんの住居となった駅前の建物に描かれたモーリーさんの壁画は、写真をクリックしてみると実に楽しいそうな戯画である。駅前の左手にある「ふくろう会館&アートギャラリー」からモーリーさんの壁画を眺め、さらに和彩館手前の母屋の壁面へと続く街並みは、新名所“アート通り”の誕生といえそうである。