2009.12.

2015.03.15
希望の連鎖
森 紘一 

 3月10日に届いた「コスモ夢舞台だより」第2号には、2点のポストカードが同封されていた。2006年にギリシャ・アマリアーダのパルキ港に設置された「融合」と昨年(2014年)7月アマリアーダのクルータ広場に置かれた「絆」の写真である。 

佐藤さんの作品は、どちらの像も胸を張って前方を望んでいる。改めて見入ってしまったが、そのポーズの先にそれぞれの女神は何を見ているのだろう。

佐藤さんが「ゴルゴーナ(融合)」を制作した経緯は『ギリシャからの手紙』(2006年 奥会津書房刊)に詳しい。また、昨年の「絆」についいては『ギリシャ・夢の架け橋』(2014年 歴史春秋出版滑ァ)をお読みになった方も多いかもしれない。

その間、8年の歳月が流れている。コスモ夢舞台自身も2010年にNPO法人となり、以来ますます、アートを軸とした個人と地元地域の活性化に取り組んでいる。ところが、肝心の佐藤さんは2010年に前立腺ガンが発症し、予期せぬ体験をすることになる。そこからの足跡は、まさにドラマである。

玄米菜食が体に良いと、日常の食生活に取り入れる人は多いが、ここまで「凡事徹底」を主義として貫き通す人は少ない。結果としてガンは自然治癒し、ストレスのない健康体を取り戻した佐藤さんは意気軒昂である。

人とひとのつながり、生き方を大事にする佐藤さんは、この春、旧交を温める外交活動にも、一歩踏み出した様子である。 

 そんな矢先、わたしもまた偶然、ある先人の肉声のSPレコード(昭和初期に録音されたと思われる)を聴く機会に恵まれ、佐藤さんとの符合に感じ入ってしまった。

先人とは大倉邦彦氏、横浜市大倉山記念館の前身、大倉精神文化研究所の創立者である。その録音は、「味の生活 和の力」と題した大倉邦彦氏のNHKラジオ講座で、「生き方」を料理に例えるという斬新な切り口の講話集であった。

“どんなに素晴らしい食材を揃えても、味付けがお粗末では一級の料理とは言えない。味付けの腕を上げるには心の持ちようが大事である。”やや甲高い声でそんな人生訓を切々と語りかけている。今の時代にも、そのまま通用する迫力が感じられた。 

思えば、「創造に生きる」〜ギリシャとの絆・人、自然との共生〜 をテーマとする佐藤賢太郎講演会が大倉山記念館で開かれたのは、2年前(2013年)のことである。人と人のつながりの広がりは、希望の連鎖となって地域や国境を越え、時空を超えて、我われを後押ししてくれるかのようだ。「ゴルゴーナ」と「絆」はまさに、その象徴である。