2016.08.21
成功させよう
佐藤賢太郎

成功させよう、これは増賀睦夫さんが私に言った言葉です。これだけでは何のことか解らないでしょう。

増賀さんは私と長年つきあいのある画商さんです。来年8月、須賀川で私の個展を企画していただきました。ここでの個展は本当に久しぶりです。須賀川市ばかりか福島県は、あの大震災で元気がなくなったと言います。

日本橋高島屋での個展前に、増賀さんから、あの震災で壊れた彫刻の修復依頼を頂きました。その修復は大理石の繊細な西洋彫刻で、修復するのも大変怖かった。その作品を収めた後、増賀さんから私の個展企画の話がありました。

増賀さんは、「どんなに高くとも作品に感動すれば、買う人はいる」と言うのです。そのような作品を作ってくれというのでした。愛くるしい動物が第一の指定であった。震災で人の心は癒しを求めている。それに応える作品を作ってほしいというのである。  

今日、少しでも安いものを求める。財布の紐がきつくなっているというのも現実です。車は高くとも売れます。芸術作品はお金があっても、誰もが買うとは限りません。

お金に余裕がなくとも欲しいという作品、人に感動を与える作品を作ってほしいというのである。これは私にとっても、そんなに簡単ではありません、難しい課題であります。時間をかければできるものではありません。作家として大切なインスピレーションの問題でもあります。増賀さんの期待に沿えるかどうかわかりません。その意味でこれがギャラリーマスガでの最後の個展になるかもしれません。。

私の個展はこれまで自分が遭遇したことや、あるいは人との出会いによって感じたことを、その都度自由に作品発表してきました。今年の日本橋高島屋では、今までにない作品に挑戦しました。増賀さんも、それけだけではだめだと言っているようであります。

来年夏のギャラリーマスガの企画展をめざして、私も一期一会で挑戦しようと思います。