2011.08.03
水害の傷跡
佐藤賢太郎

私は東日本大震災の石巻、東松島に行き被災状況を見てまいりましたが、その傷跡は言葉には言い表せないものがありました。

ところが、この度の大雨では地元阿賀町も大きな水害に見舞われました。阿賀野川が氾濫して、豊実の一部にもその影響が出ております。

私は豊実の実川集落の被害にあわれた、あるお宅に手伝いに行ってまいりました。そこは私の集落の下流、ダムの下に集落があり、ダムのできる以前の川幅でとても狭くなっています。

そこにダム決壊の恐れが生じ、上流のダムを全開にして放水しました。ものすごい水量の阿賀野川の水と実川の渓流から流れる水とがぶつかり合い、考えられないような大洪水に見舞われました。

普段は、百人一首《「奥山に 紅葉ふみわけ鳴く鹿の 声聞くときぞ秋は悲しき(猿丸太夫)」「実川の 水上遠く たずね来て 人のまことにあふぞ嬉しき」(阿部能成)》にも出てくる、あんなにきれいな渓流実川が、阿賀野川の氾濫で水の出口がなくなり集落に猛威を振るいました。

床上浸水で、床を全てはがして泥を出す作業をしなければなりません。私は床をはがすだけで終わりましたが、それも大変な作業でした。JR磐越西線の鉄道も大被害を受けメタメタになり、ジェットコスターのようなところもあります。

今年は大雪、大地震、大雨による川の氾濫を目の当たりにしました。まさに人間の意志の及ばない、計り知れない天地の力を感じます。その上に生かされているのが、私たち生き物です。

私はこうした体験をもとに、「解らない大地に」という彫刻作品を作りました。来年2月、横浜髙島屋で開催予定の展覧会に出品いたします。