2010.07.25
愛しい生き物たち
佐藤賢太郎

あれからあのツバメはどうなったか。

7月半ば頃、ツバメの巣を見ると、子どもが四羽いるはずが一羽になっていました。巣立ったのだ。家内は最後の一羽の巣立ちの瞬間を見ようとしていたが、何かの用事をしているうちにいなくなってしまいました。巣立ったのです。抜け殻の巣には親子とも姿はなく、淋しい気持ちになりました。

 ところがその後、親子そろって巣の近くをぐるぐる飛ぶツバメを見て、家内はツバメたちが最後のお別れと感謝の挨拶に来たのだと勝手に解釈しました。来年もどうぞお出でくださいと、私も願った。

6月下旬に現れた蛍はその後どうしたか。

蛍は6月下旬に現れて7月上旬に消えてゆく、そうして短い一生を終えるとおもっていました。都会から来る体験学習で泊まった子供たちに蛍を見せようと、何度か見せることが出来ました。7月下旬、見られるかどうか分からない蛍の鑑賞に行きました。驚いたことに、生徒たちが帰ったあとの7月25日の夜も蛍は光を放っていました。

夕刻、桃源の湯に浸る88歳になる母は、カナカナ蝉の鳴き声に「懐かしい蝉の声だな」という。こうして夏は終わりに近づき、季節の移ろいとともに、もの悲しい秋の虫の音に変わっていくのだろう。