2012.11.29
突然の訪問者
佐藤賢太郎

11月24日(土)、母の卒寿の祝いを終えた4時ころ、入れ替わるように、私が岩槻に住んでいた頃お世話になった山田さんご夫妻が埼玉県の岩槻から我が家に見えました。

驚いて、「どうしたのですか、旅行の帰りですか?」とお尋ねしました。誰かから、私がガンで凄くやせたと聞いて心配になり、あの世に行く前に会っておきたいのでやって来たということでした。

山田さんは「うちの家内がいつも賢太郎さん、賢太郎さんと言ってね、雪の降る前の今しかないと急遽思い立ち、不在かもしれないがそれでもともかく行こうとやってきました」というのです。しかも道路工事のことを知らず、道を間違えてぐるぐる回って山を越え、苦労されたようです。

 再会し山田さんは「よかった、元気じゃないですか」と笑顔で挨拶をしました。夕食を共にしながら、夜は健康についてはもちろんですが、来年の予定などを話しました。「ともかく私は来年のスケジュールが一杯、忙しくてあの世に行くことはできないのです」と言いますと、山田さんは笑ってダジャレで返してくれるのでした。

山田さんは大学の先輩で、奥さんは私が大学1年の頃事務職員でした。若くてきれいな方と印象に残っています。私は優秀ではないので単位をとることや奨学金の受け取り、就職問題などで事務室によく顔を出していたので、印象に残る学生だったようです。そして、私が彫刻家として岩槻でスタートすることになり、お付き合いが始まったわけです。

 山田さんは泊まるところを決めていなかったので「もちろん泊まってください」と酒を出させていただきました。家内は奥さんにワインを出し、共に飲んで話が弾んでいました。私はビワのお茶でした。それから私たちは温泉に行きました。

翌日、里山アート展の会場に案内しますと、山田さんは「あなたは人生を楽しんでいますね、贅沢して生きているよ」というようなことを言ってくださいました。そして、ふくろう会館&アートギャラリーに案内すると「お父さん何を買いますか?」と私の作品を買ってくださるようでした。結局2点買上げていただきました。私が「香典より高くついてしまいますね」というと、「ギリシャに行く旅費の足しにして、あとは誰かが出してくれるでしょ。私は換金しただけだよ」とさらっと言ってくださいました。

反対の立場であったとしたら、私にはできません。あり得ないことです。こんなにしていただく理由はないのに恐縮いたしました。

 母の卒寿の祝いにしても、私は人様に生かされ、お世話になるばかりです。人の心の温かさを感じざるを得ませんでした。

他にも、2つほど思いがけない仕事が入りました。それもずいぶん昔に知り合った方々からの依頼です。なんだか最近、神様が遣わしてくださった人々が、私たちの前に表れているように思えてなりません。時空を超えた人とひとの出会いを感じます。