2009.11.9
里山アート展に寄せる想い
佐藤賢太郎

この里山アート展は遅々たる歩みであるが、私は小さく静かに友と立ち上げた。小規模ではあるが、身の丈に合った立ち上げをしている。この地域は特段の名所、産業もなく、高校を卒業すると若者は都会へ出て行ってしまう。年々、村々の人口は激減している。こうした地域に里山アート展を毎年開催して、今年で6回目を迎える。

今、全国あちらこちらで野外アート展が花盛りですが、わたしはアートで地域おこしをしようとスタートしたわけでない。
   またこの野外アート展は、他者と優劣を競う芸術団体やシンポジウムなどの登竜門ではない。私はアートに興味を持ち、この道で生きようと歩んできた。しかしこの郷里に立ち、アートで一体何ができるのだろう、何を創造していけるのだろうと、行動しながら未だに自問自答している。

「アート」作品をこの地域の田圃に置く(今までこの地域ではありえなかった)ことによって、日々忙しく流されてゆく生活のなかで自然を見つめる空間、時間を作りたかった。そして、荒れ果てた周囲の景観を美しくしようという思いがいつしか動き始めた。
   休耕田の田圃が蘇り、阿賀野川の川面が見えてきた。メダカの住む池も作り、蛍がすめるように小川も作った。人が使わなくなって歩けないように荒れてしまった小径や、その川辺に遊歩道を作ろうとしている。紅葉や山桜も植えはじめた。それは自然との調和、自然の中に溶け込むこと、時間をもつことでもあると思う。豊かに生きるとは、何をもって実感するのだろう。アートで何ができるかを行動で表すことでもある。

私はこのように、作家のアート作品だけを観ていただくことを期待していない。自然とアートが織り成すハーモニー、そしてここにかかわる人間、その3つの共同作品として見ていただきたいのです。

しかし地元にとっては、まだまだアートは遠いところにあるかもしれないと感じ、「田んぼ夢舞台祭り」という音楽や踊りを、このアート展会場で演じていただくことにした。そのことによって里山アート展初日のレセプションには230余名もの人々が集まり、地元の方々と都市の方々の交流もかない、大いに賑わうことになった。

こうした里山アート展ですが、人々は休日には遠路から三々五々と訪れている。都市部からも注目してくれる作家がふえ、出品参加してくれるようになってきた。彼らは参加することで、自らの知名度を上げることを期待してはいない。しかし単に私への義理や人情ではなく、作家として得る何か、があるのだろうと思う。   
   自分が他から招かれて行けるだろうかと思うと、参加していただく作家にはとても感謝している。 

最後に、私は里山アート展、田んぼ夢舞台祭り、景観・ビオトープ作り、体験見学・教育という4つを一組にして、このふるさとの地に立とうとしている。それは一つの、新しい「都市と田舎の交流」のあり方だと考えている。