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                                       2006.3.2

佐藤賢太郎との対談    

「夢を求めて」(藤間七郎)                  久兵衛屋にて

藤間七郎さんとは20年前からの付き合いで、これまで私はずいぶんお世話になってきました。

ずっと以前に彫刻の除幕式に間に合うようにとヘリコプターで新潟の私の実家に飛んでいただ

いたことがありました。

藤間さんは私と同じ新潟県出身で、高校を卒業してパイロットになることを夢見てボストン

バッグひとつで上京し、ついに全日空等と同じような認可を得て雄飛航空株会社を設立しま

した。

自らの夢の実現を果たし、さらに、大勢の社員にも夢を与えようとしている方です。


人間は夢をもちたい

佐藤 今日は忙しい藤間さんにお誘いを受けて嬉しいね。

3,4人で始めた会社が、今、その規模が大きくなって大変でしょう。なかなかふくろ

う会の飲み会にも出席してもらえないのが残念です。

藤間 飲み会もさることながら夢舞台の建設作業に出にくくなった今の環境

を悔やむこともあります。


会社の規模は確かに以前より広げさせていただきましたが、借金の額や諸問題処

理の数も平衡して大きくなっておりますので、もう止まれないというのが現状でしょうかね。

佐藤 気の休まる間がないね(その話し中に会社から藤間さん宛に一本の電話が入る)。

株式会社になってあんなにたくさん投資してもらったお金があるじゃないですか。

藤間 確かに運よく私のような会社にも、多くの人が投資してくれたので助かりました。しかし、

航空機は1機、2〜3億しますので、あっという間に消えてしまいました。

佐藤 投資してくれた会社や個人に配当しなくていいの?

そうか藤間さんの会社は株式公開とか配当とかについては一切語らずして集った資金だった

ね。

藤間 そうです。それだけではなく、社員にしても世間相場からかけ離れた給料で頑張ってく

れております。もちろん、社員の給料は月々きちんと遅滞なく払っておりますが、私の給料日な

んてあってないようなもんです。株主には申し訳ないのですが、今は、配当できる状態ではあり

ません。

佐藤 よくそんなところにお金を出してくれる人がいるもんだね。

藤間 お金のある会社もあります。その人たちはものすごい努力をしているのですよ。でも、

いくらお金があっても、なにか満たされないものを感じるのでしょうね。雄飛航空は何か夢をかな

えてくれそうだ。よし、そこに投資をしてみようといって私にかけてくれたのです。

 業績を上げて配当をしたり、公開につなげたいとは思っておりますが、投資倒れになる可能

性だって十分にある。そのリスクを承知の上で、雄飛航空の株主は賛助してくれて。おります。

世間では、ほとんどあり得ないことです。

佐藤 そうするとふくろう会の人たちも、株式会社コスモ夢舞台・代表取締役佐藤賢太郎に

投資してくれているようなものだね。

労働の提供や寄付、さらに作品まで買っていただいている。しかし、こんな作家をやっている

から一生、金はたまりそうもないし、金銭では絶対に返せないよ。ただ、私はすでに配当をして

いると以前から言っています。何かというと、それは「感動」という配当をしているつもりなんです。

藤間 確かに私は佐藤さんに夢があるから投資しているようなものです。佐藤さんはすごいよ、

一円も払わないで、人に働いてもらうんだから。私はお金を払っているから、まだ、社員に動い

てもらいやすい。その点では、私の方が大変ではないかもしれない。(笑い)

佐藤 ところでコスモ夢舞台のイベントや内容をいろいろと充実していこうとしてきましが、ふくろ

う会会員だけの会費ではその維持運営も難しくなり、一般の方から賛助していただくことも必

要ではないかと考え始めました。スタートの頃には思ってもみなかった事です。

藤間 それはいい。私の会社もすぐに投資してもらえたわけではなく、長いこと苦労をしました。

夢について人様から理解していただき、将来性があると分かれば、お金を出してくれる人はい

ますよ。



魅力があること

藤間 ふくろう会のように奉仕活動ではないけれど、雄飛航空の給料は安い。それなのになぜ

残ってくれるのか。例えば、あれだけのホームページとか予約システムを作ったら大変な費用がか

かるのですが、すべて社員がやってくれるので、実質的にはタダみたいなものです。

それは大きい会社よりも、ここにいてこそ、自分の夢が見れるからだと思います。内容が同じ

だったら高い給料の方に行ってしまう。人はお金だけではなく、魅力のあるところに集まると思う。

私だって佐藤さんに魅力がなければ投資はしません。

佐藤 ありがとうございます。昨年のイベントに国会議員をヘリコプターでお迎えに行ってくれま

した。チャーターしたら大変な金額になるのにただで飛んでくださいました。私たちの仲間にはこ

んなことをしてくれる人間がいるということで、ふくろう会の皆さんも誇りに思っていますよ。でも申

し訳ないから今度、来られる時は、少しは商売になるようにしたいでのすが……。

藤間 そんなことは全然考えていません。用があったらまた言ってください。

佐藤 ありがとうございます。藤間さんが会社にお金がかかるのもよくわかりました。ようは給料が

低くともすべての社員にとって魅力があるようにするために、先行投資をしているんですね。

私は藤間さんのようにお金は動かせませんが、いろんな才能や個性のある人たちに夢や魅

力を感じていただけなければ、豊実に来てもらえなかったと思う。私自身が一つの関心事や一

つのタイプの人間だけの理解しかできなかったなら、ふくろう会もここまで来れなかったと思う。

建設する方の見えない苦労や文章を作成する人、或いはホームページを創る方の苦労も

解からなければならない。そうした特技もないという人に対しても、その方の存在そのものを尊

重することです。

リーダーは夢を描くこと、身体を使い、心も遣い、ある程度知識も必要だと思う。どんな組

織でも魅力がなければ人は集まらないですね。今までどおりの横並びの発想で、隣がやってい

るからやるということでは、この時代、企業としてもなりたたなくなっていくでしょう。

藤間 そうですね。一昨日、成田空港と埼玉をヘリで結ぶ「ヘリシャトル便」を発表したので

すが、運よく、それを日経新聞が載せてくれたので社員の士気向上につながりました。これも儲

かるからやるのではなく、常に夢を追う会社づくりの一貫です。また佐藤さんの人間一人ひとり

に接する心配りを会社経営の参考にさせてもらっています。

先日、創業時代から手足になり私を支えてくれた社員と語る機会がありました。会社を辞め

ようと思ったのは一度や二度ではなかった、しかし、そんな時に限って自分のやったことを社長が

取り上げてくれた。それが継続の力になったと話してくれました。まさしく夢のある魅力ある組織

づくり、そして関わる一人ひとりを大切にしていくということが何より大事なことだと思います。

佐藤 組織というものは大きくなったり安定してくるとそこに寄りかかり保守的になってしまう。

それでは魅力はありませんね。守ることだけに頭が固定してしまうよね。ふくろう会は組織という

ようなものではありませんが、常に魅力を創ってゆかないと自分にも仲間に対してもも求心力が

なくなってしまう。お金の配当をしていないのですから、私に義理だてることなんか何もない。むし

ろ、私は皆さんに支えられ世話になってばかりですからね。

でも、魅力を創るというのは努力が要るものですね。しかし、私はそのふくろう会を動かすこと

が義務になってはいけない。あくまで、自分も楽しんでこそ本物なんだと思う。勿論、独りよがり

ではなく、社会にいい風が流せるような楽しみ方でありたいですね。


ある和尚さんの話

藤間 ある和尚さんに出会いました。その方の話がとっても私の心に入りました。人間10歳ま

でが夢をもって生きているんだそうです。それ以後は計算するようになる。だから心は10歳のま

までいい、そうでないと夢を持ち続けられないし、真の夢の実現はないと言っていました。

そのときふと、目に浮かんだのが失礼ですが佐藤さんです。その純粋な心は10歳の心そのも

のですよね。私も佐藤さんと同じように夢に生きたいので、心の年はこれ以上いかないように心

がけます。

佐藤 そうかもしれないね、毎日、計算づくの世の中を見ているようなものです。ライブドアのこ

とも、耐震偽装にしても、その他全てと言っていいほど計算づく、それは都会であろうとも過疎の

村もみんなそうだよね。その点、縄文人は違っていたね。だからこそわれわれは縄文の風シンポ

ジウムを行う意義があるんです。

藤間 佐藤さんがどうして突如、縄文、縄文と言い出したのか理解に苦しみました。なんでそ

んなにこだわっているか、少しは分かったつもりでも深くは知りませんでした。

佐藤 考古学に関心があって入り込んだのではないのです。夢舞台つくりをしているときに地

元から縄文遺跡が発見されたこと。しかも遺跡の跡地にモニュメント制作の依頼をいただいて、

なにを創るかを考えているうちに、縄文人の生き方にぶつかって、縄文人の生活を調べました。

そうしたら、現代人が忘れている大切な生き方を私たちの祖先である縄文人がしていて、それこ

そがが真に豊かな生き方ではないかと思うようになったのです。

藤間 そうですか、豊かといえば、先ほどの和尚さんは本業と同じぐらい真剣に社会活動(福

祉、環境、地域起し等)をやりなさい。そういう、施しができる事業家こそが豊かな人生を歩む

ことができるのですと言っておりました。一度ご紹介したいと思います。

 

二人の夢

佐藤 先日、は課外授業を地元の小学校でさせていただきました。すると小学5年の児童か

ら私のというより、ふくろう会のホームページの掲示板に佐藤先生の課外授業はとっても楽しかっ

た。“夢について勉強になり、とても大切な思い出となりました”
と結んである投稿がありました。

嬉しかったですね。大人は夢になかなか同調してくれないけれど子供はしてくれます。

ところでずっと以前、藤間さんと夢を語ったことがありましたね。

藤間 そうですね。二人で学校を回って「夢に生きる」というテーマで講演することですよね。

お呼びがあれば、ヘリでもジェット機を使ってでも行きましょう。

佐藤 目で見せながら夢を語るのです。そのためにも、私も藤間さんも成功しないとね。新潟

県から始めましょうか。私は地元の上川というところの上条小学校にモニュメントを創ることにな

りました。その作品のタイトルを考えた末に。「友と夢」と決めました。なぜなら人生には友が大

切、そして夢をもつことが大事という意味を児童に贈りたかったからです。そういったことを二人で

伝えましょう。

今日は、とても有意義で話が盛り上がりましたので、これをふくろう会の対談にしましょう。

ありがとうございました。