2011.08.04
印象に残る体験学習
佐藤賢太郎

いろいろな生徒たちがやって来る。素直な子供たちの場合は、受け入れ側としては正直、とても楽しい。

そんな中で印象に残る子供たちがいた。4人の中で一人がいじめられるらしい。その生徒が「3人が本気で首を絞め線路に落とそうとした。あんな奴らだと思っていなかった。何とかしてください」と私に直訴してきた。

全員を集めて私は「首を絞めるなど、いじめがあるそうだが、どうなんだ?」と訊くと、「面白いので、遊びでやっている」と答える。  

被害者に当たる生徒は「何が面白い!」と怒る。内心、私は一方の言い分だけを信じてはいない。食事の支度をしている家内にも、真剣に聞いてくださいと訴えていたようである。

私はこう切り出した。「お互いに良い学びの機会であり、世の中に出たら自分の思う様な人間とばかり付き合うことはまずない。自分がこうと思っても相手は全然違う受け止め方をしている。これが人間社会なのだということ。お互いに自分の立場からばかり見ているのではないか。一方は面白い、片方は嫌なこととね。相手の気持ちを考えないとうまく行かない。嫌なことはすべきでない。しかし、される君にも普段の態度に問題があるのではないかと感じる。そういうことを、ここで学ぶ機会があったことはとても良かったのでないか」。

もう一つ印象に残るのは、明るく朗らかでとても良い女子生徒たちであった。薪割り体験をしている写真をとろうとした時、女の子の一人が「このカメラでもお願いします」とカメラを撮ってくれる方に手渡した。

そのときカメラが薪に落ちてしまい、カメラが動かなくなってしまった。「お父さんに叱られる」「でも、大丈夫です」と言葉が出た。

私は少しでも心が和らぐようにと、使っていない自分のカメラをあげることにした。そのカメラは一部故障していたものの、写す機能は生きていました。

夕食時、私は話をしました「お互いに人間関係は好意をもって接していくことが大事だが、その後の対応が大切だね。すっきりあきらめて、後に尾を引かない態度が良かったね。その後の言葉で事態は断然変わってくる。カメラではなく、命にかかわることや、怪我をしなくて本当によかったね」。

しかしながら、過保護や臆病になってはいけません。紙一重の明暗がそこにあることを知っておきたいものです。