2010.07.25
滞在記11体験学習
鈴木隆雄

7月21日(水)~25日(日) 

東京都区立中学2校各4名の2年男子生徒の体験学習をお世話する。 

 佐藤家の体験学習はハードな労作だ。伐採した杉の枝や丸太を山から運び出し、トラックに積んでは所定の場所まで運んで降ろす。丸太はチエーンソーで切り、切った丸太の薪割り作業である。薪は主に風呂の貴重な燃料として使う。

ここ阿賀町の面積は97パーセントが山と川で占められている。林業の担い手が少なくなり過疎化に拍車がかかっている村里に、昔のように人の手が入り管理された杉林の風景を今は見ることができない。このような杉林の倒木や途中で折れ曲がった木を伐採し利用する。個人では微々たる活動ではあるが山を活性化させ、杉山の美観と自然を循環させたいとの意識で取り組んでいる。そのため薪炊きボイラーを使っての「桃源の湯」を造り、母屋の風呂も薪炊きにした。

また、佐藤家は「農家民宿」と、食堂「和彩館」を経営している。米や野菜は農薬を使わずにつくり、季節ごとに採れる旬の山菜なども食材に使っての料理を提供している。全てではないが、自然と共存し自給するサイクルを、労力を厭わず行っていきたいとの願いで生活をしている。

このような佐藤家の体験学習であるが、ハードではあるがバリエーションに富んだカリキュラムを考えている。時期によって夫々であるが、田植えは機械の入らない田を手作業で行い、野菜の植え付け収穫、山菜採り、料理、食の大切さ等々である。里山での生活体験を生徒の皆さんは短い時間ではあっても身をもって体験していただき、額に汗して労働の厳しさと喜びを実感していただきたいという思いである。山から木を運び出すとき、怪我や事故の無いよう常に安全を考え、自分の行動と周囲の人の動きを見る。そこに作業性や段取りという手順を自然に身につけさせる。その行為が、生活の色々な場面に活かされる知恵がつくはずであると思うからだ。

真夏の太陽が照りつける中、生徒のみなさんは体力に個人差もあり、発達段階の肉体を精一杯働かせ厳しい労作によく耐え頑張っていた。仕事をやり遂げた達成感に自信をもっていただきたいと思う。また、朝食前の作業もこなし、食事についても出されたものは残さずに食べきり、3度の食事をしっかり摂り元気であった。川遊びやほたる狩りも厳しさの中の安らぎになったはずだ。

生徒のみなさんの、汗まみれになった体を「桃源の湯」で流しながら元気な会話が弾んでいる様子に、安堵するのである