2006.07.05
何が釣れますか?

お客さまを悠悠亭へご案内していてよく聞かれるのが、この川(馬取川)では何が釣れますかという質問である。
ふくろう会の遠藤さんから昨年の夏、ここで、ヤスを使ってずいぶん獲ったという話を聞いていた。しかし、岩魚や鮎やカジカが釣れるそうですとか、多分釣れるでしょうという言い方では迫力がないので、短時間ではあったがとにかく3回挑戦してみた。

といっても、子どもの頃、九州の山奥で育ち、その川でしか釣をした経験のない自分に果たして、釣れるかどうか一抹の不安があった。

まず、畑で取ったミミズを持って、悠悠亭の直ぐそばで試みた。
最初に来たのは、大きめの地元でいうボヤ(九州ではアブラメ・アブラハヤ)である。次にハヤ、アカハラ、ボヤの4匹。とにかく、小さくても人数分という数字合わせはできたので引き上げた。

2回目、阿賀野川寄りの河口近くに場所を変えてみた。木陰ではじめは気づかなかったが、目が慣れてくると可なり大きな魚影が見える。しかし、浮きはピクリともしない。そのうちマキ子さんから携帯へ「いかがですか。釣れないと今晩の夕食は何もありませんよ」と電話が入る。ジョークとはいえ、ゼロ匹のままでは悔しくて帰るわけにはいかない。

浮きの間隔を調整してみたが駄目。今度は浮きをはずし、鉛を増やすとかいろいろ工夫しているうち、来た来た!30センチはあろうかという長い顔の鯉に似た魚である。都合4匹、縄文人は、必要以上に獲らないと自分に言い聞かせ、ほくそえみながら帰宅する。
予想外の成果に皆、大騒ぎ。佐藤さんのお父さんまでもが、足の不自由さをおして、獲物のいる外の流しまで覗き込んでくださった。

地元のFさんに見ていただき、魚の名前を聞いてみた。地元ではカワザイ(西会津ではカワゼイ)鯉に似ているところから、ニゴイとも言われるそうだ。しかし、骨っぽいので地元の人は余り食さないとのこと。どうも、この土地の人は、鯉が最高の魚で、それ以外は魚ではないと思っている節がある。

さて、どうやって料理するか。生きているものを殺すのはなかなか勇気のいるものである。死んだ順番に3枚に下ろし、てんぷらやフライにしていただいた。白身で結構いける。
大事にしすぎて最後の1匹はイタチ?に持っていかれてしまった。おすそ分け、それもまた、良よしである。 

3回目になると、釣ってきてくださいと依頼されるようになる。
となると、当然、足は実績のある河口近くの場所になる。学習効果があるので前より時間はかからない。一匹は手元で逃がしてしまったので、結局、カワザイが3匹である。短時間で成果を上げる自信は多少ついた。

自分の技量をさて置いて、わずか3回の経験で軽軽に論じてはならないかもしれないが、悠悠亭近辺から河口までの何が釣れますかという質問にはおおよそ答えが出たのではなかろうか。つまり、岩魚、山女の類は大分上流に行かないと釣れそうもないということである。

いつの日か、渓流釣りの名人が現れて、これとは違った朗報を聞かせてもらえればうれしいのだが……。(K.M)