2006.4.30
朗働は感動を呼ぶ!
御沓一敏

昨年の秋に続き、4月から再び、佐藤賢太郎さんご夫妻と4人で豊実の暮らしをしているが、毎日、全身を動かす作業をしながらいろんな思いに浸る。
壁の板張りは大工さん、大谷石を運ぶのは運送屋さん、石張りは石屋さん、トラクターへの試乗はFさんの真似事ではあるが、日替わりのカリキュラムの中で、6月からはじまる中高生の農家民宿・体験学習の前に自らが学んでいるのが実情である。

石釜作りは石職人なったつもりで、パン作りに夢をかけるWさんの役に立てばと思い石を削る。彫刻家の仕事は石を彫っただけでは話にならない。芸術品として認めてもらえなければならないわけで佐藤さんの仕事を思うと気が遠くなるほど大変なことだ。さらに、青の洞門をノミで掘った禅海和尚は本当に大変だっただろうなというところにまで思いは及ぶ。

それにしても、ここには人とモノが不思議とよく集まってくる。建設材料を提供してくれるYさん、大谷石、風呂釜のボイラー、トイレにボートまでくださるというKさん、地元で唯一、建設作業に参加してくれているFさん、豊実の地で最高の米を作りたいと来てくれているFさん、すべてに共通していることは、寡黙だが、他人のために役立ちたいという「誠」のある人たちばかりである。

今、世間でいわれているリスク管理という言葉一つとっても、金銭で損をしないことが一流経営者の条件のように言われている。ところが、前述の人たちと一緒に仕事をして感じることは、その道の智恵が一杯詰まっていて、人の命を守ること、怪我をしないことへの気配りを最優先にしていることが、実に、人間味があって、うれしいし、心洗われる思いがする。

パソコンとペンしか動かしたことのなかった私にとっては、すべてが重たいものを扱うわけで、一日が終わると、正直なところ、身体はクタクタで、今日も一日、身体が壊れなかくて良かった。感謝だなというのが実感である。人が動くと書いて働くという字になるが、労働(Labor)ではない「朗働」(自主的に喜んで働く)は実にすがすがしく、心は晴れ晴れとしている。

さて、いよいよコスモ夢舞台にも本物が登場し始めた。 
佐藤さんのギリシャ行きの大元であるEUジャパンフェスト事務局長のKさんは世界や日本の仕組みと動向を良くご存知である。その方がコスモ夢舞台でやっていることは、ギリシャ版と豊実版の違いだけで、まったく同じだ。芸術で平和は実現できないかもしれないが、同じ考えを持つ人間同士が手をつなげば大きな力になるとおっしゃる。また、一緒にお見えになった陶芸家のSさんも見識の高い方である。コスモ夢舞台の施設をご案内するとお二人とも建物毎に、「ここまでやるか」と驚かれる。これほどまでに感動された方を見るのははじめてである。

10年でここまで来られたのは、もちろん佐藤さんご夫妻の魅力や人柄に引かれてということもあるが、コスモ夢舞台の建設作業に関係した私たちは、自分たちがやってきたことが実り始めた現実にもっと自信と誇りを持っていいのではなかろうか。