2011.01.30
単純明快に生きる4
佐藤賢太郎

4.人の魚に拍手を

「“心の小さな人間は、不幸な人に同情するくせに、その人が幸福になると素直に喜べない”小さな山寺にこんな貼り紙を見てうろたえた。俺のことだ」そう川竹文夫さんは語った。そしてこうも言っている、「芸能人であれ小説家であれ、著名人を誰かれかまわずこき下ろす。人をこき下ろすことによって自分を大きく見せ、周囲から認めてもらいたいからである。人生は他人と競うことが目的ではない。自分の能力を使いきり使命を果たすことが目的。それが人生に勝利し成功することでないか。だから人が大きな魚を釣ったとき拍手を送ろう。その次はあなたの竿に魚がかかるだろう」

私はこの文章を読みながら、自分の心の底に似ているものをもってはいないかと反省の思いに駆られる。テレビに出て、人のことをえらそうにあれこれ批評する人がとても多い。小さな人間ですと言っているようなものだと見ればいい。他人のことをそう言いながらも、それは私なのかも知れない。

それに比べて、私の周囲には人の魚に拍手をする人間が多い。また、人生は人と競うことが目的とは考えていない、自分の能力を使い切ることができたら人生の成功者だと思ってきた。昔、公募展に出品し始め、何時しかそれが他人との競争のようになってきた。そう感じなかったら公募展は続けていたであろうが、このまま時間を過ごすことが本当に自分のためになるのかと思って公募展出品をやめることにした。その時点では競争から負けた、負け犬のようなものかもしれなかった。

無所属になり作品を個展で発表することになった。人にはそれぞれの価値観があって、まさにさまざまであろう。一律に一つの価値観が当てはまることはないと思える。負けるが勝ちという言葉もある。今思えば私の場合、わが道を選んでよかったと思う。コスモ夢舞台という他との競争ではない夢を創ることに懸命になれるものができ、しかもこの田舎で作品も制作している。そして何よりも、夢を共有する人間に出会えたことが大きい。おそらく公募展で競争をしていたらこんなことはできなかったであろう。

ともかく、人の魚に拍手できる人間になりたいものです。