2007.01.28
御沓 一敏

有限の時間の中で

陽気に誘われて、久しぶりに3歳の孫と公園へ遊びに出かけた。
孫が私を呼ぶ時の言い方が、ジージからおじいちゃんになって、最近は、「お父さん」である。これは、愚妻や娘が私のことをそのように言うからで、それを真似してわざと口にしているようである。
家の中ではまだしも、若いお母さん方がいる公園で孫から「お父さん」と大きな声で呼ばれると、白髪頭のおじいさんとしては、消え入りたくなるように恥ずかしい。

3歳ともなると結構なスピードで公園の周りを駆け回るので体力がないと段々ついていけなくなる。何周も走った後、鉄棒へ向かった。さすがに自分ではまだ、何も出来ないのだが、鉄棒へ掴まらせ、こちらが支えて回転させたら大変に喜んだ。
これが、失敗だった。今度は「お父さんも、同じようにやって」と言ってきかない。「できない」と答えると、最後の手段の“泣きの一手”を出してきた。

「お父さん」と言われて頑張ったわけではなく、泣かれては困るので、しぶしぶ、まずは鉄棒の上に身体を乗せようと地面を蹴って飛び上がった。その瞬間に、左手が滑って思いっきり、左の胸を鉄棒へ叩きつけてしまった。痛そうな私の様子を見て、その日はさすがに孫も「帰ろう」と言い出した。

肋骨は簡単に折れやすいと聞いていたし、念のために翌日、大きな病院へ行きレントゲンの撮影をしてもらった。見える範囲では骨折はないが、肋骨に続く小さな肋軟骨の骨折はあるかもしれない。全治2週間、痛みが取れるまで1ヶ月の打撲、治療方法は湿布と安静しかありませんという診断結果であった。

この痛みを通して、“見えない大きな力によって、大難を小難に抑えてもらったことへの感謝”、“人間の身体の神秘さと老い”、“一寸先は何が起こるかわからない”ということを感じた。
限られた時間、動ける今のうちにコスモ夢舞台で一働きせねばと気を引き締めなおした出来事であった。