2007.8.9
賢太郎さんの天職
森紘一

 コスモ夢舞台の「体験学習」には、これといったシナリオはない。その時々のお天気具合とやってくる生徒の顔を見ながら、ボスの賢太郎さんがメニューを組む。     
  朝は早起きをして、昼間は思いっきり汗をかくこと。挨拶はしっかりと返事は大きな声で、といった簡単な約束事以外に規則はない。

おおむね二泊三日で生徒はひきあげていく。不思議なことに、来たときよりも顔色も良くなり表情も明るくなって、ひとまわり大きく見えるという。
  豊実の美味しい空気と和彩館の女主人マキ子さんの豊富な手料理だけではない何かがあるともっぱらの評判である。                        

ボスの賢太郎さんは多くを語らないが、どうやら熟達の演出家でもあるらしい。生徒に主役を与え、コスモ夢舞台で即興劇を演じさせているようだ。「さあ、あんたが主役だよ。これからどうする?」。生徒は驚き、最初はためらいながらもしぶしぶ動きはじめるという。いつもとは違う自分を演じ続けるうちに自信をつかみ、徐々に生きる喜びや感謝の心を会得するようである。

  本職は石の彫刻家だというが、その天職は篤き教育者といったところだろうか。