2011.02.15
豊実訪問記
坂内克裕

 214の午前10時ころ、豊実の佐藤さん宅の母屋の玄関の戸を開けて「ごめん下さい、居らったがーし」と呼ばわると、直ぐに「ハーイ」という声と共に奥さんが表れて「あらー、久しぶり!」と満面の笑顔
  「あるかどうか分からなかったので、少しばかり持ってきましたー。」と私が、昨日畑の雪室から掘り出し段ボール箱で持ち込んだキャベツや白菜などを指差すと「あらー、何よりだわー!」と奥さんの歓声。これを聞いて佐藤さんも「何、なに?」と顔を出す。こちらも「久しぶり!」と満面の笑顔です。

 一通り挨拶が終わって、「いやー、ホームページ読むと、酒は飲まない、肉・魚は食べない、玄米菜食!と言うので、お土産に喜多方ラーメンでもダメだしなーと思って、自家製野菜にしましたー。」と私が言うと、「この時期、葉物野菜は有難いですー。」と奥さん。
   
   そして玄米菜食に話が及ぶと、「今朝はこんな玄米を炊いたのよー」と小皿が差し出されました。それはヒヨコ豆と小豆を入れて炊いたもので、食べてみると玄米はもちろんヒヨコ豆や小豆も柔らかく、噛むうちにそれぞれの素材の味が楽しめます。
   私も一日一食は黒米と雑穀を入れた玄米食にしているのでとても美味しくいただけました。佐藤さんは一日三食とも玄米食なので、奥さんは玄米に黒米を入れるパターンの他に、飽きないようにいろいろ工夫しているとのことでした。

 佐藤さんは、近頃みるみる体重が減ったそうで、これも玄米菜食のおかげと言います。その辺は私も実感があって、旅行なんかで玄米食から離れると、お通じのときの生産物の様子がまったく違ってきます。いつもは気持ち良くスポンとバナナ状なのに対して、粘度が高く色も黒く不健康な感じで切れが悪く不定形になります。
   一日一食でもこうですから、一日三食では効果絶大でしょう。「本当に額が光ってますねー。」と私がホームページの記事を話題にして言うと、奥さんも「そうそう、だから大丈夫よー。」と言って三人で大笑いしました。

 話の合間に、奥さんが林檎とキウイをむいて出してくださいました。ふと見ると佐藤さんはキウイの細切れを食べてます。「あれ?、果物も止めたんじゃなかったでしたっけ?」と私が言うと、「こっちのキウイは、林檎と共に保存して熟成させるという行程を経ていない物だから、酸っぱいんです。皆んなが食べてるときに食べられないとストレスが溜まるので、少しだけ」と奥さんの説明。なるほど!

 それから、先日知人から旨そうなイチゴ大福をいただいた話になり、「目の前で食べられても我慢できた」と佐藤さんが言ってまた大笑いになりました。

 本当に奥さんの協力があってこその玄米菜食。二人とも立派です!

佐藤さんは、癌に対して手術ではなく、自己の免疫力、すなわち体内で癌と戦う力を増強させる方法で立ち向かうと決意しました。その辺の心情はホームページで詳しく語られています。
   私も、以前県職員のときに県立病院に勤務した経験があって、そのとき多くの癌患者さんを見て考えさせられたことがあります。いったい手術した場合としない場合との差は、人間らしく生きるというものさしで測ったときにはどうなのか?と。
   だから、佐藤さんの姿勢も共感出来ます。私は佐藤さんの決意に対して、明るく楽しいエールを送りたいと思います。免疫力には笑いも重要な要素ですから。そして何よりも、人は何歳まで長生きしたかではなく、その人生を如何に生きたかが大事だと思いますから。

最近の佐藤さんの、ホームページでの文章を読むと、だんだん思索が深まっていると感じないでしょうか。

人間の生には限りがある。そこに思い至ったとき、人は精一杯真剣に生きようとします。そうすると自ずから思索も深まるし、これまで見えなかったものも見えてきます。自分を生かしてくれた周囲の人や育んでくれた自然に、感謝して生きるようになります。やがて、それらが総合して作品に結晶することになるでしょう。
   芸術家佐藤賢太郎は、これから、今まで以上に良い仕事をするだろうと、私は確信し期待しています。