2014.03.19
龍雲寺のお地蔵さんを訪ねて
鈴木隆雄 

 平成26年3月15日、名刹曹洞宗洞菊山龍雲寺を参詣した。いわき市にあるこのお寺には、彫刻家佐藤賢太郎さんの制作したお地蔵さんが祀られている。月1回行われている写経会に参加することと、お地蔵さんに会いに行くことそれにふくろうの作品を設置する目的のため会員7名で訪れた。 

 在京メンバーは森紘一さん、大塚さん、渡辺さん、大内さんと私の5名だ。新白岡駅に午前7時集合し私の自家用車で出発した。東北自動車道、東関東自動車道、常磐自動車道経由、片道220キロ2時間半の道のりである。空は晴れわたり眩しいほどの日差しが差し込んでくる。車窓から見る冬枯れの木々が目に飛び込んでは瞬時に過ぎ去り、また飛び込んでくる。車内では会話が弾みあっという間に目的地に着いた。少し遅れて佐藤さん、大島さんが到着し写経、座禅、読経と写経会一連のプログラムを体験した。 

 龍雲寺の本堂に祀ってある釈迦牟尼仏の御宝前で、般若心経を写経し、座禅で心を穏やかに整え、般若心経を読経する体験は非日常の一コマとなった。この貴重な体験はこれからの心身の健康方に繋がると思えた。不謹慎ながら何よりも私にとって昼食のことがずっと気になっていた。「粥」と聞いてはいたので、禅宗独特の一汁一菜の簡素なものと思っていたが、果たして、ただの粥ではなかった。粥、かぼちゃの味噌汁、高野豆腐の煮つけ、ボイルした人参、豆の和え物、漬物とさながらミニ会席風精進料理であった。化学調味料は使わずに、味、いろどり、バランスのとれたこのような美味しい料理を作られたのはご住職の鮫島大仙和尚である。和尚は、曹洞宗大本山總持寺で修行僧時代に培われた精進料理の腕前をもって、おもてなしの心でこの膳を作って下さったように思えて、感謝せずにはいられなかった。  

 さて、「みんなのお地蔵さん」はにこにことした優しいお顔で私たちを迎えてくれた。このお地蔵さんが龍雲寺にこられた経緯は「導かれた龍雲寺の地蔵」で作者の佐藤賢太郎さんが、ホームページで紹介している。龍雲寺とはまったく縁のない長野県の方が、伊達冠石でお墓を作ってほしいとのことで、苦労して求めた石ではあったが実現しなかった。一転して龍雲寺のお地蔵さんに生まれ変わった経緯である。そのお地蔵さんの周りには数十体の小さなお地蔵さんが囲んで広場となっている。ご住職と奥様がここに「ふくろう」の彫刻を設置して、「お地蔵さん広場」にしたいとの願いから本日設置することができ広場が完成した。仏教寺院という堅苦しい雰囲気の空間に、このお地蔵さん広場は老若男女を問わずどんな人たちをも暖かく、優しく受け入れてくれ、親しみのあるお寺のイメージにつながり、行ってみたくなるお寺になるような思いがした。 

 書院の一室をお借りし、ご住職ご夫妻と親しく語らい、出会うご縁の不思議さをあらためて感じながら龍雲寺をあとにした。