2009.05.12
自然は至善
御沓 一敏

膝の方も可なり順調に回復しているが、今回は大事を取って、歌声音楽祭だけの参加と相成った。
    5月の連休に豊実で一泊というのもはじめての経験である。こんな機会は滅多にないということで、家内と一緒に娘方の上の孫(5歳の男の子)を連れて行くことになった。しかし、親から離れての旅ははじめての上に、甘えん坊で、自己主張が強いときている。爆弾を抱えて戦場に赴くような心地とはこのようなことを言うのであろう。
   豊実に行けば、しっかりものの一年生「海斗クン」に会えることとカブトムシの幼虫がたくさん採れるという振れ込みに大いに興味を示した。

「海斗クン」とは初対面ですっかり意気投合、伊藤家へお邪魔したきり食事時にも戻って来ない。そっと、2人の様子を覗いて見て驚いた。壊れたシャワーの蛇口を真ん中に立てて、土を盛り泥んこ遊びに夢中になっている。やがて、庭の細い竹を2人で力を合わせて、折ろうとしている。都会では、公園に行けば、他所の子とおもちゃの取り合い。家に帰れば、TVの変身モノを見ながら弟と格闘場面の真似と相場が決まっているのに、豊実ではまるで違う。仲良く、しかもワンパク丸出しでのびのびと遊んでいる。
    おまけに、夜には、「海斗クン」の家に泊まって良いかと訊いてきた。これもはじめての体験である。次の日も、遊びに夢中で私たちの前には姿を現さない。

   それは良いのだが、昨年、カブトムシの幼虫がたくさんいたところの場所が様変わりしていて、まったく当てがなくなった。「たくさん採れる」と言った手前、手ぶらで帰ることになると途中で何を言い出すか分らない。
   そこで、久しぶりに地元のお助けマンFさんへSOSを発信。「分った!」と一言残して、2人を然るべき場所へ連れて行ってくれた。何と、丸々と太ったカブト虫の幼虫を20数匹採って帰ってきた。お蔭さまで、全ての願いが叶い孫も周りも予想以上に大満足の旅であった。

“自然は至れる善、「至善」にできている“とは、ある高名な方の言葉であるが、環境次第でこんなにも人は変われるものなのかと改めて自然の偉大さを感じた一時であった。