2019.05.09
新緑の豊実で感じたこと
森紘一 

 東急東横線の綱島駅に近い街道沿いの右手に、「綱島SST」と呼ばれる一角があります。かつて、ここには東横線からも見える松下通信工業の建物と工場がありました。

2018年の3月にイノベーション(革新)をキーワードに誕生したこの街は、都市ガスを使って電力が供給され、水素エネルギーを供給する水素ステーションがあり、さらには米アップル社(海外初)の研究所や慶応義塾大学の国際学生寮、近代的なプラウドマンションやアピタテラス(複合商業施設)が並んでいます。

SSTとは、サスティナブル(持続可能な)・スマートタウンの略で、“人と技術の共創”によって未来を切り開いていこうという実験的な街という意味だそうです。 

豊かさとは何か、人間らしい生き方とは何かを求めて過疎の集落のまちづくりに励む我われコスモ夢舞台とは舞台装置が違い過ぎますが、共通する理念はあるようです。

しかし、大きな建物に囲まれた、きれいに整備された舗道を歩いていくと、なぜか落ち着かない気分になり、わたしはいつも急ぎ足になってしまいます。 

令和元年の大型連休明けの5月7日(火)、新潟で小宮さんのクルマに同乗させていただき、豊実についたのは10時半でした。直前に隆雄さんが埼玉県の久喜から到着していました。午後からはNPO法人コスモ夢舞台の通常総会があります。和彩館では、まり子さんがひとり厨房で昼食の準備中でした。

すでに先着組(大塚、大野夫妻、塚原、桐山、御沓、渡辺さん)は、佐藤さん、マキ子さんと一緒に田植えの残り作業から戻り、杉林の作業にむかうところで、我われ後続組(小宮、鈴木さんとわたし)も加わりました。 

田んぼの若い苗の背後には、磐越西線沿いに葉桜となった八重桜が横に並ん

で風に揺れています。阿賀野川をまたぐ赤い船渡大橋はいつもの風景ですが、その川面はいく色もの新緑を映して、淡い緑色を帯びて見えました。

コスモ夢舞台の小さな看板が掲げられた暗い杉林は、間伐されて下草も刈られ、明るい陽ざしが差し込んでいます。今年は「奥阿賀・国際アートフェスタ」も5月末から開催されるため、周囲の環境整備も早めに進められていました。

午後1時から始まった総会には石巻から古田さんも駆けつけ、その後の懇親会にも参加されました。「豊実に来ると元気になる」のは、このゆったりとした時の流れと仲間の笑顔に出会えるからかもしれません。 

翌日(5/8)、「奥阿賀・国際アートフェスタ」のパフォーマンス会場ともなる森林ステージづくりを担当する大塚さんを後続組と古田さんで手伝いました。地元の助っ人古山さんのご尽力で、ことは順調に運びました。ありがとうございました。

 帰り道、佐藤さんが制作した狐の嫁入り屋敷の「祠(ほこら)」を取材する日報の記者に後続組は同行して津川に立ち寄りました。 (写真提供/小宮和巳さん)

ここにも佐藤さんのロマンとこだわりがあります。そして我われの夢もつながっています。実に狐の嫁入りの彫刻から22年ぶりに、祠が制作されて物語は完結したわけです。バックの麒麟山や阿賀野川に溶け込んだ彫刻は、一幅の風景画のようでした。佇む佐藤さんの笑顔も抜群でした。