2013.03.10
頭のいい人悪い人
大塚秀夫 

日本橋高島屋で作品展のとき、大学の恩師が来られた。彫刻家佐藤さんが大学の時は落ちこぼれでしたとあいさつされる。落ちこぼれとはいわゆる成績不良。頭がいいとは言われない。恩師である先生は佐藤さんを評して、「ふきこぼしだ」と言われた。いい表現だなと思った。あふれるエネルギーで昔のお釜の蓋がふつふつと吹きこぼれてている状態なのだ。エネルギーがあふれている状態なのだ。

寺田寅彦は『科学者とあたま』というエッセイを残しています。その中で博士は科学者になるには頭がよくなくてはいけない、頭が悪くなくてはいけないとも書いています。

頭のいい人は見通しがきくだけに、あらゆる道筋の前途の難関が見渡されて、諦めてしまいがちです。頭の悪い人は楽観的ですから、難関にも挑戦して切り抜けていく。乗り越えられない難関などまれであるからです。どうも頭が悪い人を寺田寅彦は好むようです。さらに頭の悪い人の長所をこれでもかと挙げているのです。頭の悪い人は決して人が手を出さないことにも一生懸命取り組んでいる。駄目でない糸口をつかんでいく。

寺田寅彦は次から次へとあたまの悪い人の利点を挙げています。

佐藤さんからうれしいメールが届きました。

ギリシャからようやく、受け入れるメールが届いたそうです。市民の広場に彫刻を制作して名誉市民として迎えるプロジェクトが動き始めたのです。メールの中で「私に再度彫刻をつくるチャンスが来ました。そして夢をいただいて、応援してくださった仲間の名前も刻みたいです。本も書きたいですね。何が何でも生きているうちに実現したいです。大ブレイクの年になりました。」とのことです。

ガンになった人間がこんなに夢を持ち行動できる。

成績優秀でなかった自分がこんなに夢を持って生きられる。

生きることは何が大切であるか。いつも示してくれます。