2012.02.23
美術画廊での「発見」
森 紘一

 横浜髙島屋美術画廊の『佐藤賢太郎個展<彫刻>』は2月14日に無事終了した。のべ何人の方々が足を運ばれたのだろう。それにしても、にぎやかな個展だった。

2月10日は、そのハイライトだった。美術評論家の藤島俊會先生と佐藤さんが作品を展示した会場をまわりながら対談して歩くギャラリートークを、居合わせたお客様は愉しまれたにちがいない。

作品づくりの意図や思い入れだけではなく、作家の日常生活そのものがアートを産みだしていくさまが、自然にひきだされ、素直に語られていたようにおもう。

普段、わたしは作品と接するとき、イメージの世界で作品と語り合うことが多い。その場合、作者の実像を追うことはない。もとより、作品の価値は作家のネームバリューや作品の値段だけで決められるものではないが、それを手にした個人が作品を通して作家と結ばれたと実感する喜びはひとしおのことだとおもう。

今回、わたしは会場で佐藤さんと握手する購入者の喜びの笑顔を何度か目撃した。その点を佐藤さんは、「生き方を買われたようだ」と感想を漏らしている。

赤いバック地に小石が一つ、小さな額縁に収められた作品が会場の右壁面を飾っていた。何の変哲もない小石の作品は「発見」と名付けられていた。ギャラリートークの後半に「これは何ですか?」という質問があった。「私にも作れそう」という質問者のひと言が会場の笑いを誘ったのだが、佐藤さんの回答も傑作だった。

「これを見て、どう感じるか、それはあなた次第です」「バックの赤が無ければ、アートとはいえないかもしれない。作品といえるかどうかは紙一重、そこが実に楽しい」

わたしも、画廊で新しい「発見」をしたような気がする。作品をただ並べるだけでなく、例えば作家のメッセージや願いをどれほど伝えることができるかが、まさにセールストークのポイントになるとおもう。

ひるがえってコスモ夢舞台のこれからも、佐藤さんの講演活動を軸に「都市と田舎の交流」をさらに進化させることで、新展開が期待できそうである。