2013.07.08
作品積み込み終えて
佐藤賢太郎

 私は高校の頃、成績は中位いでまじめでおとなしく、どちらかと言いうと目立たない生徒であった。しかし、卒業した高校や大学に私の作品があります。かつての同級生の中には「今、佐藤君が同級生で一番目立っていますね」と言う方がいます。

私は美大ではない工業大学卒業で、彫刻家になることは考えもしなかった。そんな職業があることも知らないし、ましてやそんな選択など考えもしなかった。

 そして私のような平凡な作家(大概の作家なら誰もが企画して頂きたいと思うでしょう)が、日本橋高島屋で個展ができるとは夢の夢でした。しかも、ずうずうしくも進んでギャラリートークを企画し、実行します。ファンはありがたくも、名古屋、福島から今回もわざわざ来てくださいます。

 ところで、今回の作品積み込みは並大抵でありませんでした。今日積み込みました。搬入前々日に積み込んだのは初めてです。

私はガンを宣告され、自らの命の限りを意識した。体重も10キロ以上減りスリムになった。しかし、食事や生き方を変える努力によって、以前より精神力、気力が湧いてくるようになったと思う。ウェラー・ザン・ウェルです。まさに人生は、夜明けの詩と思えるこの頃であります。秀才でない私は、人生山あり谷ありさまざま経験をしてきました。

今年は最大のイベントである第10回「里山アート展」や理想郷であるコスモ夢舞台公園が実現目前です。若いときに考えられなかったことを夢に描き、そして実行し、夢が次々と実現してきました。

薄氷を踏む思いもしましたが、ガンになって学習する時を与えられた。先日一冊の本の中に、こんな言葉を見つけました。

アウシュビッツで自ら高圧電流に触れ命を絶つ者、恐怖で発狂する人、気力を失い投げやりになる人、そんな中で生き延びた人びとに共通することは、愛する人や、信念にも似た「心のよりどころ」をもった人たちであるようです。アウシュビッツで生き延びた一人、ユダヤ人の心理学者フランクルはそのように述べています。

 私には、こんな展覧会はもうできないかもしれない。全力投球です。生かされているとき、全力投球して生きることができるのは幸せです。ギャラリートークでは、作家としての想いを語り、人生の生き方をお越しいただいた皆さまと語り合えたら嬉しいです。

これはまさに、天の配剤、夜明けの詩というのでしょうか。