2013.05.14
導かれた龍雲寺の地蔵
佐藤賢太郎 

513日、福島県いわき市の龍雲寺に私の制作したお地蔵さんを設置してきました。

このお地蔵さんは、導かれて作られたものと心から思います。導かれての1とは、初め白御影石を予定しておりました。ところが、長野県のある方から伊達冠石でお墓を作ってほしいとの依頼があり、石山に上るにはギリギリの雪が降り出しそうな12月中旬、その石を探しに宮城県角田市へ走りました。その石は、有名なイサムノグチさんが使ったことで知られ、いつか私も使ってみたいと思っていました。結局、長野のお墓は実現できなくなったのですが、この石が龍雲寺の地蔵として誕生したのです。 

ところでその石が手に入り制作すると、難しい石で、ものすごいクラックが入っていて、当初のデザインを変えざるを得なかった。これが導かれての2です。そして、ミシリ仕上げ(ノミと金槌で仕上げる方法、ノミ切り仕上げとも云う)をしようと思っていたのですが、どうも納得できないので、別な仕上げをすることになった。これが第3の導きであった。

そして、ごはん茶碗を作ってとの依頼もあり、制作したのですが左利きに作ってしまったのですが、茶碗を180度回転すると右効きになり、表面の茶碗に伊達冠特有な泥がついていた。期せずして茶碗の正面にポイントになりました。これが第4の導きです。

設置施工は手際よく、何時もの石屋さんにしていただき無事終わった。地蔵堂の建屋を作る設計士さんもお出でになった。何よりも、住職さんとその奥さんに喜んでいただき、奥様より「いつまで見ていても飽きない」と言っていただき、有難かった。

地蔵堂はまだまだ完成ではないが、ご詠歌においでになった檀家のご婦人が地蔵をみて、「これからお地蔵さんお参りさせて頂きますと」笑顔をいただきました。そして奥様おっしゃるように、お地蔵さんに小さな手を合わせる子供たちの光景を、早く見たいものです。

「長年求めていたお地蔵さんに会えた」と奥様が言ってくださった人との出会い、これが導かれての第5と思った。

地蔵とは心の象徴である、誰しも心安らかになりたいものです。私も作らせていただきました。私は奥様に言いました「私が作ったと言うより、私を通して作らせたのでしょう」。ことにこの度の大地震災後は、人に大切なものは何かを再認識させられます。最後に龍雲寺のお寺はとても素晴らしいアートを感じる内装になって感心させられました。住職、奥様のセンスがいいのでしょう。豊実から車で2時間半の道のりです、また伺いたいものです。