2012.09.13
作品を作る
佐藤賢太郎

作品を作る上で何が一番難しいか、技術が必要であるのは言うまでもありません。技術を身に着けるにも時間を要しますが、それがすべてではありません。大切なのは自分が何を作りたいのか、その意志をはっきり持っていることであると思う。

生き物は、すべて命を与えられています。私は今その「命」ということに関心があります。この地上に命を与えられ、また消えてゆくその繰り返しであります。

メダカの泳いでいる姿を見ていると、とても心が癒されます。聞くところによれば、寿命は1〜2年、長くて5年だそうです。メダカは小さくて弱い生き物です。シンプルな機能で、生命の原点をメダカに感じます。水がなければ死んでしまいます。流れが強くても生きられません。穏やかに流れる水が必要です。だからこそ命が感じられます。この命を多くの方が気軽にみられるように、メダカの川と石畳を作ることにしました。

もう一つ作品「いのちの田圃」について。田んぼにハート型に蛇行した水路を作りました。まるで心臓に血が流れているように水が流れ、田んぼにはメダカやドジョウが棲み、その季節になるとトンボやツバメが集まる。しかも、そこに稲を植えています。稲は当然変化し、ここにも命の推移が見られます。

また、仕事場や自宅に入ってくるバッタやイナゴなどの昆虫もいのちです。そして、種もみから発芽する命を作品にしています。

私はどうして命に関心があるか、それは言うまでもなく人間には命に限りがあるということを身近に実感するようになったからです。