2018.08.11
タイトル『豊実の風に癒される身体』
吉田麻希4

 阿賀町豊実での生活は今日で10日になる。

今日は一日、里山アート展に出品する作品作りをしていた。

 作品の資材は、使わなくなった古いプロジェクター。その中で使いたい部品があり、解体作業をしていた。作業が進むほど、プロジェクターの中が見えてくる。中には、カラフルな導線と細かな部品たちが凝縮されていた。まるでおもちゃ箱のように可愛らしかった。そして、同時に、こんなにも多くの部品で成り立っているのかと驚嘆した。

 この日の午前中、宮沢賢治について書かれた本を読んだ。彼は、彼の作品にもあるように星や宇宙に対して大変関心のある人だったそうだが、望遠鏡は好まなかった。しかし、顕微鏡は好み、ひたすら数々の小さな断片を観察していたそうだ。その小さな物たちに詰まった無数の小さな物たちを見て、宇宙を感じていたのかもしれない。今日の私も、そんな気持ちであった。身近にある何気ない物に、宇宙は広がっている。そんなことを教えてくれた一日だった。

 帰り道、自転車に乗り空を見上げた私は、あぁ私も豊実という小宇宙の一部なのだろうと思った。なぜなら、自転車を漕ぐ汗ばんだ私の体を、勢いよく風が癒してくれていたからだ。この時私は、自分が何か自分以外の大きな流れと繋がったような気がした。

 記 : 吉田 麻希