2008.06.04~06
体験学習・K高等学校生 

埼玉県から来たK高等学校男子生徒7人を受け入れることになった。マキ子さんは受け入れ準備があるため、賢太郎さんと筆者が迎えに行くことになった。津川のB&Gにバス8台が到着、総勢270名の大人数である。

和彩館へ着いて、自己紹介の後、ここでは挨拶をきちんとすること。大自然に負けないよう大きな声を出すこと。入浴時のマナーなどについての約束事を話した。2つの班に分けて佐藤さんと、筆者が担当した。
    偶然にも、昨年同様、佐藤さんの班は良くしゃべる方で私の班は寡黙である。仲間同士ではそうでもなさそうなのだが、人前でも話せるよう何とか元気を出させてあげたい。

最初の仕事は草刈機を使って線路脇の土手の草刈を行う。里山アート展の会場であり、害虫の発生を抑え、地域の景観をよくするために貢献していることを話す。機械の操作の説明と同時に通常とは違う危険と隣り合わせであること。そのためにも、一定の間隔をあけて作業をすることや大きな声を掛け合うこと、周りへの気配りの大切さなどについて述べる。 

雨の予報であったが、晴れたために気温は急上昇、1人ギブアップ気味な子が出たので、筆者が交代する。その生徒にとってはこの作業が苦手であったとしても、外の作業では目覚めるかも知れない。ここでは、仕事を最後までやりきり、結果を見せることに専念する。
   予定の範囲が終わり、石夢工房に行くと佐藤さんの班は大木を切ったり割ったり、まだ、作業を止める様子もなく、明らかに、筆者の班よりは、ハードな作業をしていた。私たちは、世の中一般でいう上手い下手、早い遅いの競争をさせるつもりはないが、一所懸命かどうか、自分が一番大変だったと思っている子がいるとすれば、どのように感じたのか。人それぞれであるから、あえて、説明はしなかったが手伝う子も出てきた。
   初日で疲れたであろうということで、桃源の湯でゆっくりと疲れを癒してもらい夕食にする。

翌朝は、6時半スタートの朝仕事、前日、割った薪を蔵の横の置き場に運ぶ作業である。7人全員で力をあわせ、手渡しで行うと、瞬く間に終わってしまう。

朝食後は、前日行った作業を班ごとにローテーションして行う。ここでは、とにかく汗を流すことを通して得たお土産を持ち帰えってもらおうと思っているので、楽なものはないはずである。昼食後は学校全体で実施する田植えの集合場所へ送って行く。こちらの作業よりは楽だったが、寒かったという感想なので早速、交代で風呂に入ってもらう。

 夕食が終わって、奥阿賀の方言や食、生徒が訪れたことによって地域に与える影響等のインタビューが生徒側から民家の人へ行われた。汗を流す体験をした後だけに、説明がスーッと入るようで、真剣そのものであった。残念なことに、2名の生徒が質問用紙を忘れてきたため、輪の中に入れずにいた。忘れるということは、真剣さがたりないということで、送り出してくれたご両親や先生方の期待に応えるためにも、残された時間、悔いのないように力を発揮することを促した。

翌朝は、希望者のみ、6時半に集合すれば、美術館と縄文館を案内すると約束した。起きて来たのは佐藤さんの班のみであった。これは差別ということではなく、“朝起きは三文の徳”ということを教えるためにも今後も希望者のみに限る事にしたい。お蔭で、全員、縄文館で居眠りをする子はいなかった。

朝仕事は、全員、7時スタートである。近隣の集落の人から製材の切れ端が出たのでくれるという情報を得たから指定の場所へ行く。今のところ、薪用の木材に困っているわけではないが、人間関係のつくり方を生徒に教えるためにも、新しい出会いを大切にしようと積極的に受けていったわけである。

全体的に大きい声が出ないという反省を踏まえて、朝食後は、悠悠亭において、発声練習と礼の練習を徹底して行う。回数を重ねるうち段々と成果が出てきた。
   そこへもち米が炊き上がったという連絡が入ったので、急ぎ餅つきのために和彩館へ向かう。自分たちがついたばかりの餅を汁餅、あんこ餅、黄な粉餅、納豆餅、ゴマ餅などいろいろなものをつけて食べる。1個ずつ食べても大変な量になる。満腹状態のままでは、最後の昼飯は入らない。腹ごなしとさらに、気合を入れるために、全員が佐藤さんと一番ずつ相撲を取った後、間伐してあった長い杉の木を3本運び出し、石夢工房に持って行った。帰り際に見た子どもたちの表情は来たときとは明らかに変わっていた。

特に子どもたちからのインタビューの時に感じたことであるが、6年間、奥阿賀で一貫して体験教育プログラムを続けてこられた学校側の姿勢が見事に実を結んでいるように思えた。
   昨年の文集に書かれていた中の一つに、「感性・知性・協調性」を育み「生きる力」、「学ぶ力」を高めるとあったが、受け入れ側スタッフもさらなる精進が必要であると感じた。(御沓一敏)