200977

エレルヘイン少女合唱団豊実来訪の経緯

                      EU・ジャパンフェスト日本委員会  事務局長 古木修治

1.EU・ジャパンフェスト日本委員会について

当委員会は、1993年に設立されたNGO(非営利民間公益団体)です。

「『地域社会への貢献』や『社会的責任』に関わる市民やアーティストの国境を越えた活動を支援し、健全な社会つくりに寄与する」ことを目的としております。
設立16年目となる現在、日本国内各地、欧州各国などで、活動の基本方針(第16回公式報告書8P参照)に基づき、年間600を越えるプログラムを支援しております。

2.当委員会が「コスモ夢舞台」の活動と出会った経緯

 @出会いのきっかけとなった写真プロジェクト

1999年より、当委員会では、毎年、ヨーロッパで活躍する写真家を日本に招聘し、彼らの撮影による写真プロジェクト「日本に向けられたヨーロッパ人の眼/ジャパン・トゥディ」を開始しました。日本の47都道府県の姿をヨーロッパ人の写真家による作品として、制作し、現代に生きる私たち日本人がその異なる視線によって、取り上げられた姿から、「見過ごしてきた」あるいは「見えているのに目を向けて来なかった」日常に改めて向き合う機会を創出し、また、その作品群を未来に託す文化遺産としようという試みです。

 A「コスモ夢舞台」の活動を紹介してくれた「奥会津書房」

この写真プロジェクトは、観光写真というより、その土地の「人間の暮らし」や「自然」をテーマとしているため、撮影に際しては、写真家が地元に可能な限り、深く関わることが不可欠です。2005年、この写真プロジェクトの一環として、ギリシャとフィンランドから来日した2名の写真家が福島県を撮影することになり、地元で多大なご協力をいただいたのが三島町で「会津学」の出版など、地域に根差した質の高い活動を展開されている奥会津書房の遠藤由美子さんでした。
それらの作品は翌2006年には、福島県立美術館やギリシャのアテネで写真展が公開されました。

その年に、ギリシャで開催されていた芸術文化事業「欧州文化首都」(主催:欧州連合、ギリシャ政府:報告書16P参照)の一環として、アマリアーダ市において、石像彫刻シンポジウムが計画され、当委員会に対し、日本から彫刻家の派遣の要請が寄せられました。そこで、ギリシャ人の写真家が、福島県の撮影を担当したこともあり、奥会津書房の遠藤さんに、地元の彫刻家の推薦を依頼したところ、県内ではないが、新潟県豊実で、活動している「コスモ夢舞台」の佐藤賢太郎さんを紹介いただいた次第です。

  佐藤さんのギリシャにおける活躍については、著書「ギリシャからの手紙」に詳しいのでご参照ください。

3.「コスモ夢舞台」の活動について

  当委員会の支援は、一過性のイベントやプログラムではなく、あくまでも、高い志を抱いた人々が始めた継続的な「活動」に対して向けられています。 昨今、メディアでは「過疎化」を一面的にとらえ、いかにも人口減少により、すべてが衰退するように取り上げていますが、その反対の「過密化」が素晴らしいことばかりでもないのも事実です。

  また、経済が豊かになることは、万人の願いでありますが、世界第2位の経済力を誇る日本が、先進諸国には例がない「自殺大国」であることも現実です。 

   前述の写真プロジェクトの活動を通して、当委員会では、全国各地で展開されている草の根の地域活動の姿に数多く接してきました。

  過疎化が進み、地域格差が進む中、国全体の大きな課題の一つとなっている「地域活性化」の実態は、実際に現地に入ってゆくと、千差万別です。

  自立よりも行政に依存している活動も少なくないなか、当委員会にとって、「コスモ夢舞台」との出会いは、過去に例のないことでした。

そのたくましく、生き生きとした姿に鮮烈な印象を受けました。ここでの活動の一番重要な点は、リーダーの佐藤賢太郎さんの大きな人間愛であり、それをゆるぎない志とアートで深めてゆこうとする姿勢が存在することです。

  ボランティアとともに作り上げつつある様々な施設や6年目を迎える「里山アート展」は、計り知れない情熱と質の高さがあります。活動の価値とは、予算額や知名度、実施規模だけでは、推し量ることはできないのです。

4.多くの人々に知っていただきたい「コスモ夢舞台」の活動

   全国各地で、活動を展開する地域の団体やアーティストにとって、「コスモ夢舞台」を訪れることによる収穫は大きく、それぞれのその後の活動に大きな刺激を与えています。佐藤賢太郎さんの活動は、日本国内はもちろんのこと、海外でも、例が少ない充実した内容であり、当委員会としては、これまでも活動の様子を多くを国内外に紹介することに努めてまいりました。

  今回の来日に際し、当委員会が助成しておりますエストニアのエレルヘイン少女合唱団は、エストニアはもとより、ヨーロッパを代表する合唱団で、その芸術性の高い歌声は、国際的に最高の評価が寄せられています。

  2007年の天皇皇后両陛下のエストニアご訪問の際に、同合唱団の歌声が披露されましたが、その御縁もあり、7月30日の東京公演では、皇后陛下のご臨席が内定しております。

  同合唱団の公演は、営利を目的にしたものではなく、「歌声」を通じて、世界の人々の「こころ」と「こころ」を繋いでゆこうとする理想を抱えており、公演活動と同時に日本の素晴らしい田園で地元の方々と交流を重ねる機会を持ちたいとの希望を抱いており、当委員会では、佐藤賢太郎さんに、本件でご協力をお願いした次第です。