2009.09.14  
鳥の演劇祭見聞1
佐藤賢太郎

9月12日(土)EU・ジャパンフェスト日本委員会から招待をいただき、鳥取県(旧鹿野町)鳥の演劇祭2を見学に参りました。人口4,000人の小さな町に廃校を活用して劇場を運営している16人のグループがあり、自立していると聞きました。その活動を直に見聞することは、今後の私たちコスモ夢舞台の活動に役立つのでないか、そうしたEU・ジャパンフェスト日本委員会の配慮だったようです。

鳥の劇場は、2006年演出家の中島諒人さんを中心に鳥取県鹿野町の使われなくなった幼稚園や小学校の体育館を地域の文化拠点の劇場として再利用、創設されました。「魅力的な作品を創り、演劇活動を通じて社会に貢献する。またその公共性が広く理解され、認知されるように、教育普及活動にも力を注ぐ」と紹介されていた。

招待されたのは私だけでなく、和歌山県からアート活動をしているNPO、取手のアート活動グループ、東京で文化活動をしているセッションハウス、そして山陰少年少女合唱団代表の方々でした。いずれもEU・ジャパンフェスト日本委員会とつながりのあるグループであった。

さてその廃校再利用劇場(旧体育館)で、鳥の演劇祭り2ギリシャ神話「酒神ディオニュソス」の演劇が始まった。(これは劇団が出演するのではなく、有名な演出家の劇団を招聘したものであった)私の感性が悪いためか、内容が高度なためか、正直言って理解しがたいギリシャ神話であった。どうも、母親が自分の子供を殺してしまって嘆いているという筋書きらしい。観客席は190くらいだそうですが満席でした。

それはさておき関心を集めたのは、中島諒人さん、鳥取県知事平井伸治さん、演出家鈴木忠志さんの終演後の鼎談であった。
   おおむね参加者はこのトークに注目し、好評であったと感じました。司会者の中島さんの問いに答える鈴木さん、平井さんの話はなかなか良い感じでした。こんなに柔軟に対応される知事もいるのかと思いました。

私の僅かなメモをたよりに感想を書きます。その上、私の聞き違いもあるかと思いますが、不本意な場合はどうぞお許しください。
   結論から申しますと、この劇場の意義や今後の課題は、私の主宰するコスモ夢舞台の位置や意義、これから進むべき道にも大いに参考になるところがありました。

   鈴木さんは、「この劇はギリシャ神話の殺人の話ですが、小さな劇場だから真剣に聞けるのではないか、マンモス劇場であったらどうですか。現代は人間関係が希薄で、人間同士向き会えなくなっている。特に大都会ではそうではないか」と言うようなことをおっしゃっていました。

県知事はそれに対し、「東京や大阪ならばこのような上演も可能ですが、地方のこんな小さな町で上演することはなかなか無いことです。それをここで上演するところに価値がある」と言っていたようです。

鈴木さんは、「東京はだめです。いま日本は沈んでいる。芸術家はこの状況を打破したいと新たな生き方を創造しようとする。例えばコンピューターがうまく使える人が有能な人として評価されるが、創造的な価値をつくれる優秀さとは違う。そこに芸術家の価値がある」と語っていた。

県知事は、「東京の山の手線は2分おきに電車が入るが、はたしてそれは人間の生活にとってよいのだろうか。つまり、人間疎外が起こりやすいのではないか」と田舎生活の大切さを言っていました。

鈴木さんは人間的に生きるには大切な空間であると、自ら富山県の利賀村という過疎地に劇団を作った。田舎のよさもあるが、わずらわしいこともあるようで、「鈴木さんは昨日何時に帰ってきたとか、選挙でも、役場からまだ投票していませんが投票に来てくださいとまで言われるのです。都会は隣室で人が死んでいようが解からないのに、田舎では家の内部までわかってしまうほど干渉される厄介さがあるのだ」などと笑いを誘っていた。
  つまり集団としてのあり方のバランスが難しいということでしょうか。

司会者の中島さんが「劇団の立ち上げに人を募集したところ、5人くらいかと予想していたら25人も応募され、驚きました」と言うと、知事は「芸術は大都会で生まれるものではない、むしろ、こういうところから生まれるのでしょう。今日は演劇を見せていただき、空き家を上手く生かして人間同士が向きあうことが、とても大切だと思いました」と結んでいました。